県福祉作文コンクール
写真家の桃雲さん最優秀賞
富士ニュース 昭和21年11月15日




 富土宮市山宮の写真家伊志井桃雲さんは、このほど県労働者福祉基金協会による「第九回福祉作文コンクール」で、前回の入賞に続き、今回は最高賞となる最優秀賞を受賞した。
昨年、市内の会社員・渡井新二郎さんの伴走でマラソンに初挑戦・初優勝した体験を伴走用の口ープにちなんだ「白い絆」と題してつづり、審査員からは「あらゆる可能性に挑む姿は、障害を持つ人々に、たくましく勇気を与えるもの」との高い評価を得た。
桃雲さんは、うっすらと見えていた光さえも失うという絶望の淵からはい上がってきたことで、「その体験が同じく障害を持つ人の励みになれば…」と同コンクールに応募写真活動再起の原動力にもなった盲導犬アイリーンとの出会いをつづった前回に続いて、今回は、その後、「全日本視覚障害者マラソン競技会」に挑戦した体験を原稿用紙十枚にまとめた。
 作品では、ゴール手前での逆転優勝という劇的なレースの模様と、その裏にあった二人の苦しみと励ましを中心に、「光を失ったが、残る自らの可能性を試してみたい」というマラソン挑戦のきっかけや、伴走の渡井さんとの出会い、厳しい卜レーニングなどの回想を交え、伴走用の白いロープが次第に心の絆として固く結ばれていった様子をたどっている。
その後、二人は地元の朝霧高原マラソンでも、一般に混じって二十四位の健闘を見せ、桃雲さんは「マラソンへの挑戦は大きな自信となった。今回の受賞はそれに続く三重の喜びとなり、渡井さんをはじめ、協力してくれた周囲の人たちに感謝したい」と話している。目下のところ、桃雲さんは体力づくりとしてマラソンを続けているが、「これまで得た感動を写真活動の新たなステップにしたい。写真作家として日本で最も多くの富士山写真集を発表するという目標に向けて、創作に力を入れるとともに、引き続いて、自らの活動で、社会貢献の道を探っていきたい」と意欲をふくらませている。