「やればできる」テーマに、波乱の人生児童らに

静岡新聞 平成9年3月5日




視覚障害と闘いながら写真家としての活動を続けている富士宮市山宮の伊志井桃雲さん(53)に話を聴く同市教委主催の「ボランティア学習講座」がこのほど私立富士根北小で開かれ、「やればできる」をテーマに伊志井さんが波乱に満ちた自らの人生を子供達に語った。


 伊志井さんは富士山の撮影をライフワークにしている写真家。かすかに残っていた左目を頼りにカメラを構えてきたが、四年前に完全に視力を失った。その後、失意の生活を送っていたが、次第にショックから立ち直り、これまでの経験で養った「心の目」(伊志井さん)を頼りに撮影活動を再開し、昨年夏には新しい写真集を出版した。
 こうした伊志井さんの生き方は九年度から県内の小学校で採用される道徳の副読本の中に「輝きは心の中に」のタイトルで紹介され、市教委でも「大きなハンディを克服して力強く生きている人間の話を聞き、同時に思いやりの心も育てたい」と伊志井さんを講師に招いた。
 伊志井さんは妻の勝子さん、盲導犬のアイリーンとともに三−六年生二百二十七人の前に登場した。写真家になったきっかけ、富士山への思い、失明のショックの大きさ、アイリーンとの出会い、最近始めたマラソンへの挑戦など人生の軌跡を言葉をかみしめるように話し、「これだけは誰にも負けないというものを自ら挑戦して探してほしい」と児童達に訴えた。続いてボランティアで同校に読み聞かせに訪れている近藤俊子さんが「輝きは心の中に」を朗読した。
 講演の機会が多い伊志井さんにとっても小学生の前で話すのは初めて。記念に富士山の写真を子供たち全員にプレゼントした。