農作業の感性 芸術に生かす
日本農業新聞 平成8年12月5日




「霧峰富士」の魅力にとりつかれ、富士宮市で創作活動を続ける写真家・桃雲さん(53)。若い頃、目から光を失ったにもかかわらず、二十年ほど前から本格的に富士山を撮り始め、数冊の写真集を世に送り出している。六、七年、前からは約十eの借地でもち米や小麦、ハクサイなどの栽培も手掛け、農作業で得た感性を作品にも生かしているという。
 日頃は愛犬「アイリーン」の力を借り、本業の合間を縫って農作業に従事する。土とふれあっていくうちに気づいた写真と農業の共通点は「私の写真と農業は自然が相手。これで完璧というものはなく難しいが、逆にやりがいもある」とし「農作業は脳波によいホルモンを分泌するんです」と笑顔で話す。
 桃雲さんは事務所のアトリエ桃雲を拠点とし、「心で表現する光の絵」をテーマに、山ろくや人情をとらえた作品を、「富士山」「ふじ乃里」など数冊の写真集に収めている。そのほか年十回余りの個展を都市圏で開くなど、意欲的な活動を続けている。
 こんな桃雲さんは、先ごろの「全日本JBMAカップ小田原マラソン大会」(全日本盲人マラソン協会など主催)にも初挑戦。伴走者の渡井新二郎さん(47)とともに十キロを走り、優勝したほどの努力家でもある。今月一日には地元で行われた大会にも出場、健常者に交じって二十キロのコースを健闘した。「私が走ることで同じ仲間に勇気を与えたい。ハンディにとらわれず、行動範囲を広げることが大切」と強調する。